一目でわかるモトグッツィのエンジン

イタリアのバイクメーカー、モトグッツィ。
本国では知らない人はいないというほど有名なメーカーとされているが、日本では熱心なバイク好きのほかはあまり知られていない印象もある。
しかし、このメーカーのバイクはそれほどバイクに詳しくない人でも、すぐに理解することができる。
エンジンのレイアウトが、他にはない唯一無二のものになっているのだ。

このメーカーでは縦置きのエンジンを採用している。
縦置きV型2気筒エンジンで、これは世界広しと言えどもモトグッツィのみの特徴とされている。
もちろん、国内メーカーにもエンジン縦置きを採用しているメーカー・モデルはない。

そもそも、ほとんどのバイクで横置きエンジンが採用されているのは、その方が安定性に優れているからだ。
エンジンの回転をバイクの進行方向に合わせて配置した方が安定しやすいし、後輪を駆動させやすいのだ。
また、縦置きよりも横置きのほうが製造コストも抑えられると言われており、バイク産業の発展とともに縦置きが淘汰され、結果的には横置きに統一されるような形になったのだ。
モトグッツィはそんな世界のバイク業界の流れに逆らって、独自のスタイルの追求しているとも言えるわけだ。

なお、モトグッツィの縦置きエンジンが登場したのは1966年、V7というモデルからだ。
1970年代にいったんこのシリーズは姿を消すが、2000年代に入って復活、現在ではこのシリーズはモトグッツィの看板シリーズとして世界中のバイク好きから高い評価を得ている。

モトグッツィのエンジンのメリットとは?

どうしてわざわざ縦置きのエンジンを採用しているのかというと、じつはこのV型2気筒エンジンはもともと、自動車用のエンジンとして開発されたのだという。
それが諸事情あってバイクに搭載されることになったわけだが、その際にエンジンの駆動力を後輪に伝えるシャフトドライブを採用することで、安定性と後輪の駆動力の効率を維持し、横置きと比べても遜色ない性能を実現している。

加えて、モトグッツィのエンジンならではのメリットとして、オイルの最高温度を下げやすい、潤滑トラブルを回避しやすい、クランクドライブとオイルの摩擦によるパワーロスが少ないといった点が挙げられる。
これによって、さまざまなシチュエーションで本来の性能を発揮できる高い自由度が実現されているのだ。

少しノスタルジーを感じさせるような縦置きならではのデザインの妙が粋である。
加えて最新の環境性能にも対応しており、年々厳しさを増している排ガス規制にももちろん対応、さらに後輪のスリップを防ぐためのトラクションコントロールシステムなども採用されている。
古くて新しい、しかもイタリアならではのデザインの魅力を楽しめる、これがモトグッツィが高い評価を得ている理由なのだろう。